繊維業界の廃棄物問題その2

昨日とよく似た画像ですが、
これは古巣テキスタイルメーカーの倉庫ではありません。
古巣が発注している工場です。
工場でも、今までやった仕事は資料としてある程度の生地はとっておくのですが、
概ね事務所にこんなふうに保管しているので、
ある程度の時間が経ったら収納キャパがいっぱいになってしまうので、
廃棄処分されます。
一つ一つがものすごく少ない用尺なので、
販売するにも手間がかかりすぎるので
そのための労力と時間を考えたら、一派一絡げで処分した方がマシ、ということで
処分されてしまうことが多いです。

まず、工場の人にネット販売するスキルがない上に、
それを習得するような時間的な余裕がありません。

処分する際は、膨大な処分代がかかります。
リサイクル業者にお願いしたら、上手くすれば無料で引き取ってくれることもあります。

こういうものすごく細かいものは、大概が粉砕して綿にされて、
自動車のシートの中に詰めるためのものになります。

工場さんは、「処分料かかるなら無料で引き取ってもらえるだけありがたい」と考えるので
とても価値のある製品のはずなのに、
「仕方ない。」と言って処分屋さんに委ねます。

それほど、
国内の生産工場も仕事に追われていて、経済的には常に逼迫しています。

それほど、安い工賃で仕事を請け負わざるを得ない状況です。

普通に安心して生活できるぐらいの収入を得ようと思って、
そのためのコスト計算をして工賃を出したら
「高すぎる。」となります。

繊維業界の川上にある生産の現場はいつでも究極の貧困状態を強いられ続けています。

生産者が安心して生活できるぐらいの収入を得るために工賃を上げたら、
生地単価がぐんと上がります。
そうすると、その生地を使って作られた製品の単価もぐんと上がります。
そうしたら「高いから買えない」みたいな消費者心理が働くと思われがちなので
ねぎられます。

なので生産者はいつも大変で、いつも家計は火の車です。
アパレル業界の、生産の現場で出る廃棄物の中で、あんまり話題に上がらないけど
地味に深刻なのが糸です。

アパレルメーカーから、
「この生地で作った製品を何枚作ってください。」
とOEM会社が受注します。

その発注をもとに、OEM会社は用尺計算をして、必要な生地のM数を割り出します。
そしてテキスタイルメーカーにその必要なM数、生地を発注します。

テキスタイルメーカーはその発注を受けてそのボリュームの生地を作るためにはどれだけの糸が必要かな?と計算をします。

糸は
一本1kgが一般的な標準ですが、
場合によっては1本2kgなんていうものもあります。

ニット生地だと、編み機によって「給糸口」の数が違っていて
古い機械だと24口、
それ以外だと36口、
48口など、機械によっていろいろ違います。

24口の機械だと、24本の糸が必要です。
1本1kgの糸を使用する場合は24kgの生機が出来ます。

36口の機械だと、36kgの生機ができます。

48口の機械だと、48kgの生機が出来ます。
60口の機械だと、糸が60本必要で、60kgの生機ができます。

これがいわゆる経済ロットになります。

生機単位で大体1反10kgぐらいで計算します。
それを加工していたら7〜8kgぐらいの反物になります。

糸を構成している綿の、加工ロスっていうのがあって
加工する工程で綿の繊維が脱落するんです。

これもまた今は問題で
生地を加工する工場の排水フィルターには、
大量のフエルト状の脱落した繊維が引っかかって、
これを再利用する方法はないものか?と考えている工場さんもあります。

1反7〜8kgぐらいになった生地、
そのカウンターにもよりますが、30/-天竺あたりだと大体35m前後になります。

一般的には48口〜60口ぐらいの編み機が多いのかな、というイメージなので、
経済ロットは
48kg〜60kgとなります。
1反10kgの糸を使うと計算したら、
ほぼ5反〜6反ぐらいが経済ロット、となります。

で、
それを生地に換算したら
175〜210mぐらい出来ます。

これが経済ロットとなります。(安い値段で生産できる最小ロットという意味です)

でも今の国内のアパレルさんで、そんなに発注できるところは今は皆無です。

昔はTシャツ1型3000枚とか4000枚とか動いていたのですが、
今はあの天下のビームスやポールスミスあたりでも
全国の支店全部含めても1型100枚発注があるかどうか、という状況です。

オリジナルの生地を作って、1型100枚。

身頃は見頃ばっかり、袖は袖ばっかり、的に、最大限に効率の良い裁断方法をとって、
1枚あたりの用尺が55cmぐらいに抑えられると仮定します。(生地幅によっても大きく変わりますが)
100枚作るのに必要な生地は55mです。

経済ロットは175〜210mです。

ブランドさんは
経済ロットの単価で55mだけ作ってくれと言ってきます。

無理です。

繊維業界には、「糸割屋さん」という業種が存在します。
1本1kgの糸を、500gの糸2本に割ってくれるんです。
もちろん工賃が発生します。
私が知っているのは1kg200円でしたが、今は1kgあたり糸の値段と同じぐらいの工賃がかかるみたいです。
その分は生地を作るためのコストに反映されます。(要するに糸値2倍になってしまうということです)

糸を割ってもらうのは、1本を2本にしてもらうのがせいぜいなので、
(それ以上割ってくれる割り屋さんはほぼ皆無です)
それで編んでも
87〜105mぐらい編めちゃいます。

でもブランドさんが欲しいのは55m。
じゃあ、55mだけ編んでもらって、それを納品することになります。

そうしたら、
糸が余ります。

もしくはある糸全部を編み切ってもらって55mだけ納品します。
そうすると、生地があまります。

それ、全部浮いてしまいます。
処分対象になってしまいます。

生地ならまだ他に転売するということも考えられますが、
mあたりのコストを考えると、
編み工賃とか、加工賃とかが上乗せでかかることを考えると、
編み切っちゃおうと考えるのは、リスクが高いです。

糸はダメです。
そんな中途半端な長さの糸、
機械にかけたって編み始めたらあっという間に編み終わっちゃいます。
編み機に糸をかけるのって、すっごく時間がかかって、場合によっては数時間から半日ぐらい要します。

経済ロットで生産することを前提として算出した量産単価で
55mしか発注がきません。

そんな量だったらサンプル単価でお願いします。
と言いたいところです。
でもブランドさんは
量産単価で、55mしか要らん。と言い張ります。

今の日本国内のアパレル業界の現状は廃棄物がたくさん出るような仕組みになっています。

しかも。

Tシャツ100枚分の生地を発注するブランドさん、
展示会で受注を受けた枚数の2倍数量を発注します。概ね。

なので、実際に完全受注生産だったら50枚分しか必要ではありません。
これは完全にサンプル反で賄える数量です。

で、結局作ったTシャツ、受注分以外はあんまり売れなくて、
廃棄になるんでしょ?

そんで、
中途半端な数量の生地を作らせたせいで、
投入した糸、余った分は廃棄になるんでしょ?

もうね、
私如きが消されても全然いいです。

安いからって、ファストファッションブランドで新しい服を買うの、やめましょうよ。
流行っているからって、
プラスチック製の収納用品買うの、やめましょうよ。
トレンドを追うの、やめましょうよ。
トレンドが去ったら、それらを処分してまた新しいトレンドを追うの、
やめましょうよ。

少し前に
「流行りを追う人、めっちゃカッコ悪いと思うんだよね。」
と発言する、元ビームス社員で今は独立して会社をやっている人がいました。
うん。これからはそういう時代になっていくよなあ。
と思っていましたが、
その人、いまめっちゃ流行っているカレーとアウトドア商材で商売をしていました。

「いやあんたも流行りに乗ってるやーん。」
と思いましたが、本人には言っていません。多分角が立つから。(笑)

昔はね、
BC反なんか売りやがって。
乞食みたいなことを商売にしやがって。

みたいにdisられることも意外と結構ありました。

マウンティング気質の人は世の中には必ず一定数いて、
自分の見識の狭さを棚に上げて他者をdisることで自分の格が上がったかのような錯覚を得たいという気持ちからの言動なのではないかな?と今は思います。

私自身は「これってエコだよね。」と思っていたので、
自分がいいと思ってやっていることをdisられるのが、恥ずかしいというか、惨めというか、なんとも言えない気持ちになったこともありましたが。

でも続けてきてよかったなあ、と思います。

私ができる範囲のことってものすごく微々たるものですが、
それでもそれを20年間続けてくることができたっていうのは、
自分なりに「よくやってきた。」と褒めてあげたいと思うし、
これからは「廃棄物を再利用する必要性」がもっともっと重要な時代になってくるんだろうなと思うので、
これからも自分でできる範囲内で細々と廃棄物再活用の活動を続けていきたいなあと思っています。

我々糸へんの商売は、
側から見た華やかな印象とは相反して、
かなり汚くてハードです。

もうちょっと続きます。

投稿者: wildberryshopblog

Wildberryという生地のネットショップの店主です。

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